米国では8日に1日当たりの新型コロナウイルスの感染者数が過去最多となりました。このような状況下、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は9日、感染が急拡大している州は「シャットダウンを真剣に検討すべきだ」と述べたと伝わっています。このため、市場では、米経済活動の正常化が遅れるとの懸念が強まっています。
こうした状況を反映して、米国では「景気敏感株」は売られ、「感染拡大の影響を受け難いハイテク株」への資金シフトが加速しています。このため、「弱いNYダウ・強いナスダック総合株価指数」という構図になっています。実際、9日の米国株式市場では、NYダウは反落し、前日比361.19ドル(1.4%)安の25706.09ドルでした。対して、ナスダック総合株価指数は続伸、同55.25ポイント(0.5%)高の10547.75と連日で過去最高値を更新しました
このような米国株の推移を受け、日経平均は底堅いものの、上値の重い値動きが続いています。日本株が底堅いのは、米ナスダック高だけでなく、上海株式市場が堅調なことも理由として挙げられるでしょう。実際、中国の政府系メディアが6日、株高を支持する論説を展開し、上海株が買われました。これを好感する格好で、6日の日経平均は前日比407.96円高の22315.35円で取引を終えました。このように足元では、中国景気回復期待の高まりを背景とした、上海株高も日本株の支援材料になっています。
ただし、10日の中国株式市場で大型株が下げました。政府系の2つの基金が株式の保有を減らすと発表し、中国当局が最近の株高ペースを落としたい意向を示唆したからです。このため、来週以降に関しては、上海株高を牽引役にした日本株高への期待はやや後退した感があります。それでも、株式市場への資金流入観測や景気回復期待は根強く、当面の上海株は強い動きを続ける見通しです。
なぜなら、6月30日に施行された香港国家安全維持法が資本流出につながらないと強調するため、中国の政策当局が、国内有力企業の上場促進など施策を重ねるなど、中国株への投資家の期待を膨らませているからです。
なお、10日の日経平均は、前日比238.48円(1.06%)安の2290.81円でした。この日は、東京都で10日、新型コロナウイルスの新規感染者が240人以上確認され過去最多になったとの報道が嫌気されました。また、予てよりETFの分配金捻出に伴う売り需要が4000億円と試算されており、この売りも大引け前に出たと観測されていました。ただし、6月9日の23185.85円からの調整は6月15日の21529.83円でいったん一巡し、現在は値幅ではなく日柄調整をしていると認識に変更はありません。そして、来週以降は、現在の「もみ合い相場」から上下いずれかに放れる可能性は低くはないでしょう。なぜならば、最低限の時間調整を行ったとみているからです。もし、上下いずれかに放れたら、素直にその放れた方向につきましょう。
2020年7月10日
相場の見立て・展望(7月10日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。