前回の当コラムでは、 “FRBによる急激な利上げが、米国経済をオーバーキルするリスクが低下したため、米国株市場が足元で堅調に推移しています。これが日本株への強烈な追い風になっています。”としました。
ちなみに、FRBは7月27日に開いたFOMCで、政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.75%引き上げ、2.25~2.5%に変更しました。0.75%の大幅な引き上げは2会合連続です。ですが、パウエル議長は、FOMC後の記者会見で、「(金融引き締めが進むにつれ)累積的な効果が経済とインフレにどう影響しているかを評価しながら、利上げペースを緩めることが適切になるだろう」と将来の利上げ鈍化に言及しました。これを受け、市場では、秋以降の利上げ幅縮小への期待が高まりました。
また、7月28日発表の2022年4~6月期の米実質GDP速報値は、前期比年率0.9%減と、1~3月期に続いて2四半期連続でマイナス成長となりました。金利上昇やインフレの影響で、住宅投資が落ち込み、消費の減速も目立ちました。これを受け、28日の米10年物国債利回りは前日比0.11%低い2.67%でした。一時は2.64%と4月中旬以来の低水準を付ける場面がありました。
一方、米議会下院は7月28日、半導体の生産や研究開発に527億ドルの補助金を投じる法案を可決しました。この法案は、バイデン大統領の署名で成立します。法案は2022会計年度(2021年10月~2022年9月)から5年間、国内に半導体工場を誘致するための補助金として390億ドルを投じます。米国内で新工場の建設を表明しているインテルやTSMC、サムスン電子に配る見通しです。
米長期金利低下や、半導体補助金法案の成立は、半導体関連中心にハイテク株への強烈な追い風と言えるでしょう。実際、7月28日のナスダック総合株価指数は続伸し、前日比130.170ポイント(1.1%)高の12162.593ポイントでした。ちなみに、前日27日のナスダック総合株価指数は4日ぶりに反発し、同469.848ポイント(4.1%)高の12032.423ポイントと、今年最大の上昇率を記録していました。
このような状況を受け、7月29日の東証マザーズ指数は4日続伸しました。終値は前日比9.57ポイント(1.35%)高の718.55ポイントと、約3カ月ぶりの高値を付けました。米国のハイテク株高を受け、日本でもグロース株を買い戻す動きが加速しているためと考えます。一方、日経平均は3日ぶりに反落し、前日比13.84円(0.05%)安の27801.64円でした。この日の下落の背景は、東京外国為替市場で円相場が一時1ドル=132円台まで急上昇し、輸出で稼ぐ自動車株や電気機器株が売られたためです。
よって、当面の東京株式市場では、円相場の影響を受け難い、内需系グロース株が物色の主役になるとみています。良好な投資環境は続き、サマーラリーも続くはずです。積極的な市場参加をお勧めします。
2022年7月29日
相場の見立て・展望(7月29日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。