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2022年9月30日

相場の見立て・展望(9月30日付)

情報のプロフェッショナル
藤井 英敏
前々回の当コラムで、“「日経平均が終値で5日移動平均線を下回り、且つ、5日移動平均線自体が下向き」の時は、7月1日の25841.75円を目指すことになるとみています。通常の相場よりも、資金管理を厳格にして、相場が急落しても致命的なダメージを被らないようにして、相場に臨んでください。”としました。また、前回の当コラムでも、「9月22日現在、「日経平均が終値で5日移動平均線を下回り、且つ、5日移動平均線自体が下向き」の状態です。引き続き、「まずは生き残れ!儲けるのはそれからだ!」を前提にしたスタンスで、相場に臨むことをお勧めします。」としました。

そして今回も結論としては、“「まずは生き残れ!儲けるのはそれからだ!」を前提にしたスタンスで、相場に臨むことをお勧めします。」”とします。また、「日経平均が終値で5日移動平均線を下回り、且つ、5日移動平均線自体が下向き」の時、6月20日の25520.23円で止まらない場合、3月9日の24681.74円を目指すことになるとみています。」としておきます。

まず、9月30日の日経平均の終値は前日比484.84円(1.83%)安の25937.21円と、大幅に反落しました。5日移動平均線(30日現在26307.33円)、25日移動平均線(同27586.65円)、75日移動平均線(同27402.00円)全て下回っています。チャートは著しく悪化しています。

慎重スタンスをお勧めする理由は、(1)インフレへの対応でFRBの金融引き締め意欲が非常に強いことに加え、(2)英国の金融・財政政策が泥縄的なため、欧米金融市場が動揺しているからです。

FRB関連に関しては、FOMCの投票権を持つ米クリーブランド連銀のメスター総裁が、9月29日、CNBCのインタビューで「向こう1年間のインフレ期待に基づく実質金利は、プラスの領域に入り、その領域でしばらくの間とどまる必要がある」、「FF金利はまだ抑制的な領域にさえ達していない」、「利上げにより高インフレを抑制するというFRBの動きを変更するような米金融市場の機能不全は見られない」などと述べています。カンカンのタカ派発言です。

一方、英国に関しては、「インフレ抑制のための政策金利の引き上げ(9/22)→トラス新首相の大型減税案の突然の発表(9/23)→「ポンド安・英債券安・英株安のトリプル安発生」→金融・為替市場安定のためのイングランド銀行と財務省の緊急声明(9/26)→イングランド銀行による突然の量的緩和(QE)再開・量的な金融引き締め(QT)の延期発表(9/28)」というドタバタ劇となっています。

詳しく言えば、イングランド銀行(中央銀行)が9月22日、政策金利を0.5ポイント引き上げて、年2.25%にしました。2021年12月以降7会合連続の利上げです。また、資産買い入れ制度(APF)で保有する英国国債の削減については全会一致で決定し、今後12カ月間で800億ポンドを満期償還・売却を通じて減らし、総額7580億ポンドとすることも決定しました。しかしながら、23日にトラス新政権が打ち出した経済対策への懸念から急落した英国債を買い支えるため、イングランド銀行は、9月28日、長期国債を一時的に無制限で買い入れる緊急措置を行うと発表したのです。緊急措置は10月14日までで、量的緩和策で購入してきた国債の売却は開始時期を10月31日に延期しました。インフレ抑制のための金融引き締めを急ぎながら、同時に、国債を購入する金融緩和措置も行うという異例の対応を余儀なくされたのです。正直、メチャクチャな政策で、場当たり的な対応です。

なお、イングランド銀行が英国債の緊急買い入れに動いたのは、年金基金の破綻を防ぐ目的だったそうです。トラス政権が大規模な減税策を発表した後、財政悪化の不安で金利が急上昇(債券価格が急落)したことで、運用資産の評価が下がり、「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(LDI=債務主導投資)」で投資する年金基金に対するマージンコール(追加担保の差し入れ要求)が広がったとのことです。そこで、年金基金の急速な運用悪化に危機感を強めたイングランド銀行が、売りが売りを呼ぶ事態を防ぐための「市場介入」に踏み切ったとのことです。

とはいえ、9月28日の緊急措置はあくまでも短期的な対処療法でしかありません。英国のインフレ圧力は強く、財政政策への不信感を払拭するような明確なメッセージも英政府から発表されていません。むしろ、トラス英首相は9月29日、英BBCラジオとのインタビューで、「政府は正しいことをした。これは正しい計画だ」と自身の経済政策について述べました。どうやら、政策を撤回・修正する気は毛頭ないようです。

残念ながら、世界の金融・為替市場は、この英国のチグハグな政策対応による混乱の影響を受け続ける見通しです。ちなみに、(9月29日、サマーズ元米財務長官は)、「市場が英国のマクロ経済政策を持続可能とみなしていないことが重要な問題だと指摘。英金融市場については「2週間程度の国債購入で永久に安定することはない。ファンダメンタルズを修正するまでのつなぎという感覚がなければ、安定は恐らく2週間でさえ続かないだろう」と語った。」と、ブルームバーグが報じています。

最期に、これも繰り返し述べていますが、米国では、例年10月〜11月は、ファンドからの「タックスロス・セリング(節税売り)」が出易いことが知られています。また、11月8日には中間選挙が行われます。メスター発言で分かるように、FRBは全くタカ派姿勢を崩していません。よって、10月の米国株式相場の動向は警戒しておくべきです。だからこそ、防御力重視のスタンスで、秋の波乱相場を乗り切ることを強くお勧めしているのです。ただし、近い将来、非常に高い確率で「セリングクライマックス」が発生し、そこが絶好の「バーゲンハント」のチャンスになるともみています。つまり、現時点では、そのチャンスを虎視眈々と狙うことが最も賢明な投資戦略と考えています。
情報のプロフェッショナル
藤井 英敏

カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。

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