前回の当コラムで、“今回も結論としては、“「まずは生き残れ!儲けるのはそれからだ!」を前提にしたスタンスで、相場に臨むことをお勧めします。」”とします。また、「日経平均が終値で5日移動平均線を下回り、且つ、5日移動平均線自体が下向き」の時、6月20日の25520.23円で止まらない場合、3月9日の24681.74円を目指すことになるとみています。」としておきます。“としました。しかし、今回は、押し目買いを含め、積極的な市場参加をお勧めしますに、スタンスを180度転換します。というのは、投資環境が劇的に改善したからです。
トラス英政権が9月23日に発表した年450億ポンド規模の減税策のうち、年収15万ポンドを超える部分にかかる所得税率を45%から40%に引き下げる案を撤回したことが主因です。一方、フィッチ・レーティングスは10月5日、英国の長期外貨建て発行体格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げました。トラス英政権が打ち出した大型減税などが中期的な財政赤字の拡大につながると指摘し、金融引き締めを続けるイングランド銀行と政策が一致せず、市場の信認や政策の枠組みの信頼性を損ねるとみているとのことです。ですが、市場の混乱に配慮して、トラス英政権が、僅かでも譲歩した姿勢は評価するべきです。
ところで、10月7日の日経平均は前日比195.19円(0.71%)安の27116.11円と、5日ぶりに反落しました。5日移動平均線(7日現在26951.19円)を上回っています。一方、25日移動平均線(同27325.43円)、75日移動平均線(同27450.46円)、100日移動平均線(同27348.68円)、200日移動平均線(同27308.75円)全て下回っています。チャートは悪化したままです。しかしながら、10月3日の25621.96円での底打ち感が非常に強いとみています。よって、当面は、この25621.96円を起点にしたリバウンドの発生を想定します。当面のターゲットは9月13日の28659.76円です。なお、逆に25621.96円を割り込むようだと、当然のことながらシナリオは完全に変更します。
ちなみに、来週は、FRB高官の講演や、9月20~21日開催分のFOMC議事要旨の公表があります。具体的には、10月10日にエバンズ・シカゴ連銀総裁の講演(22:00)、ブレイナードFRB副議長の講演(11日2:00)、メスター・クリーブランド連銀総裁の講演(12日1:00)、FOMC議事要旨(9月20~21日開催分、13日3:00)です。ただし、市場はそう簡単にFRBがタカ派姿勢を崩すことはないと、織り込んでいます。このため、高官らが、タカ派発言をしたとしても、米国株式市場が動揺することはないでしょう。
ちなみに、FRBのクック理事が10月6日の講演で「インフレ圧力は受け入れがたいほど高い」との認識を示し、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も「インフレがピークに達するまでにはまだ時間がかかる」とし、金融引き締めに前向きな姿勢を示しています。
つまり、当分の間、FRB高官のタカ派発言は、特に市場の材料にはならないでしょう。逆に、それを嫌気して売られる局面は、押し目買い好機と考えます。
2022年10月7日
相場の見立て・展望(10月7日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。