6月第4週(26~30日)の先物の投資部門別売買動向(日経平均先物、TOPIX先物、ミニ日経平均先物、ミニTOPIX先物の合計)では、海外投資家は2週ぶりに売り越しました。売り越し額は5013億円でした。現物株(東証・名証の合計)との合算では1971億円の売り越しでした。前週の6月第3週は、先物と現物株との合算では3018億円の売り越しでした。海外勢は、急ピッチな相場上昇を受けて、引き続き利益確定の売りを出したようです。
テクニカル的に、日経平均については、7月6日の終値は4月10日以来の25日移動平均線割れとなりました。チャート形状は、6月19日の33772.89円が1番天井、7月3日の33762.81円が2番天井で、6月27日の32306.99円がネックラインとなっています。今後、ネックラインを割り込むようだと、「ダブルトップ」となり、調整は本格化して値幅を伴う可能性が高いとみています。逆に、ネックラインを割り込まない限り、下限がネックライン、上限が1番天井となる「ボックス相場」が継続すると考えています。ただし、25日移動平均線を上回らない限り、ネックライン割れリスクが高い状態が続くと考えます。
日本株が調整している主因は、「米国金利の上昇と米国株安」です。米金利が上昇している理由は、好調な経済指標の発表が相次いでいるため、FRBによる金融引き締めが長期化するとの見方が強まっているからです。
例えば、6月29日に発表された週間の新規失業保険申請件数は23万9000件と、前週から減少し、市場予想の26万4000件を下回りました。また、7月6日発表の6月のADP全米雇用リポートでは、非農業部門の雇用者数は前月比49万7000人増と、市場予想の22万人増を大きく上回りました。また、ISMが6日発表した6月の非製造業景況感指数は53.9と、5月の50.3や市場予想の51.3を上回りました。これらの強い経済指標発表を受け、6日の米10年物国債利回りは、一時4.08%と、3月上旬以来の高水準を付ける場面がありました。この長期金利の上昇が、米国株式の悪材料となっているのです。
一方、日本企業の生産活動は活発で、大企業の景況感は良好で、設備投資にも積極的になっています。 7月3日発表の日銀短観6月調査では、半導体などの供給制約の緩和で生産が回復したことにより、業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス5と、前回の3月調査のプラス1から4ポイント改善しました。先行きについても、プラス9とさらに改善する見込みです。また、企業がコロナ禍で先送りしていた設備投資を積極的に行うことから、2023年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比11.8%増となりました。この良好な企業マインドは、日本経済及び日本の株式市場を強力に下支えする見通しです。このため、目先の日経平均が仮に調整しても、底割れするリスクは低いと考えています。
以上のことから、当面の投資戦略としては、質の高い収益を生み出し、財務内容も比較的健全な優良企業である、「クオリティ株」のうち、低PER・低PBRで、株価が出遅れ気味の「内需系大型株」を引き続き狙うことをおすすめします。
2023年7月7日
相場の見立て・展望(7月7日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。