日経平均は7月12日に31791.71円まで下落した後、足元では戻り歩調です。日経平均はテクニカル的に、一番天井は6月19日の33772.89円を1番天井、7月3日の33762.81円を2番天井、6月27日の32306.99円をネックラインとする「ダブルトップ」を、7月10日の下落で完成させました。しかしながら、7月13日終値は32419.33円と、前述のネックラインを上回ってきました。また、14日終値も前日比28.07円安と小幅反落したものの、32391.26円と、連日でネックラインを上回っています。今後に関しては、5日移動平均線(14日現在32229.56円)を上回って推移する限り、リバウンドは継続するとみており、目先の戻りメドは25日移動平均線(同32968.22円)付近と考えています。
需給面では、7月第1週(3~7日)の先物の投資部門別売買動向(日経平均先物、TOPIX先物、ミニ日経平均先物、ミニTOPIX先物の合計)では、海外投資家は2週ぶりに買い越しました。買い越し額は256億円でした。現物株(東証・名証の合計)との合算では570億円の買い越しでした。前週の6月第3週は、先物と現物株との合算では3018億円の売り越しでした。海外勢の利益確定の売りは前週でいったん終了したようです。今後、海外勢が再び先物と現物株との合算で大幅に売り越しに転じない限り、日本株の下値は堅い状況が継続しそうです。
ところで、7月12日発表の6月の米CPIは前年同月比3.0%上昇と、5月の4.0%から減速しました。1年前は8.9%だった上昇率はその後、縮小傾向が続いています。ちなみに、米CPIが今回のインフレ局面でピークを付けたのが2022年6月の9.1%でした。また、13日発表の6月の米PPIは前月比の伸びが0.1%と、5月の0.4%下落から上昇に転じたものの、市場予想の0.2%上昇を下回りました。そして、前年同月比の上昇率は0.1%と2020年8月以来の低さでした。このため、今回の米インフレは非常に高い確率で、沈静化していく見通しです。
よって、FRBは、7月25日~26日のFOMCで0.25%の利上げを決めた後、9月19日~20日、10月31日~11月1日、そして、12月12日~13日の年内残り3会合のうち、あと1回0.25%の引き上げで、「利上げは打ち止め」となりそうです。
一方、7月7日発表の6月の米雇用統計では、非農業雇用者増加数は20.9万人と事前予想の24万人程度を下回りました。しかしながら、失業率は3.6%と前月の3.7%から低下しました。また、時間当たり賃金は前月比+0.4%、前年同月比は+4.4%と、前月の同+4.3%を上回りました。失業率が低下し、賃金も上昇傾向です。また、7月13日発表の新規失業保険申請件数(7月8日終了週)は、市場予想に反して減少しました。前週比12000件減の237000件と、市場予想の「25万件への増加」を下回りました。また、より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は246750件に減少しました。このように、これまでの急ピッチな利上げにかかわらず、米労働市場は堅調です。
つまり、米国に関しては、「米インフレは沈静化しつつあり、FRBの利上げは最終局面入りしており」、その一方で、「米雇用環境は堅調」のため、「米国経済のオーバーキル懸念」は杞憂に終わる可能性が高いと判断できるでしょう。
米国金利のピークアウト期待の高まりを反映して、外国為替市場で円が対ドルで買われており、足元では「円高」が進行中です。にもかかわらず、7月13日以降の日経平均は戻り歩調を辿っています。つまり、円高への感応度は低下しています。よって、当面の日経平均に関しては、終値で5日移動平均線を下回らない限り、強気で対処することをおすすめします。一方、5日移動平均線を割り込むようだと、「ダブルトップ」を形成したことを重要視して、一転して、慎重スタンスに切り替えることは、忘れないでください。
2023年7月14日
相場の見立て・展望(7月14日付)

- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏

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- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。