7月26日まで36年ぶりとなる13連騰をしていたNYダウは、流石に、27日は利益確定売りで、14日ぶりに反落しました。14連騰になれば1897年以来、126年ぶりの記録になっていましたが、残念でした。それはさておき、NYダウがここまで強い値動きとなっている主因は、FRBによるここまでの急激な利上げにもかかわらず、米国の景気後退は避けられるとの期待が高まっていることに加え、FRBの利上げ局面終了が近いとの観測が強まっていることです。さらに、本格化している決算発表で、企業業績の改善が確認できたこともプラスに寄与しています。
ところで、26日のFOMCで、FRBは市場の想定通り0.25%の利上げを決め、政策金利を22年ぶりの高水準に引き上げました。そして、FOMC後に記者会見したパウエル議長は、「データが正当化すれば9月会合で政策金利を再び引き上げることは確かに可能であるし、据え置きを決めることもあり得る」、「労働市場にダメージを与えずに、インフレを抑え込むことに成功し始めている」、「FRBのスタッフは年後半から経済成長の顕著な鈍化を見込んでいるものの、足元の経済の強じん性を踏まえて景気後退を見込まなくなった」などと述べました。
議長発言で、ここまでの急激な金融引き締めで、インフレはFRBの目論見通り沈静化していることに加え、FRBが、「米国経済のソフトランディング」を想定し始めていることが明らかになりました。これは当然、米国株にポジティブです。
ただし、議長は、「インフレは我々の長期目標である2%を大幅に上回ったままだ」、「2025年あたりまでは2%に達しないだろう」とも述べています。このため、仮にあと1回の0.25%の利上げ実施で打ち止め感が出ても、すぐに利下げに動くことなく、政策金利は長期間、高止まりする見通しです。もちろん、マクロ指標が急激に悪化して、リセッション懸念が強まれば、話は変わってきます。
なお、7月27日の米10年物国債利回りは前日比0.13%高い4.00%でした。2023年4~6月期の実GDP速報値が前期比年率2.4%増と、23年1~3月期の2.0%増並みになるとの市場予想を上回ったことや、7月16〜22日の週間の米新規失業保険申請件数も22万1000件と、前週から7000件減り、市場予測の23万5000件を下回ったことが、債券の売り材料になりました。この長期金利の上昇は、高PERのハイテク株、グロース株にはネガティブに作用します。よって、米国では、低PERのバリュー株が物色の主役となる見通しです。
一方、日本では、日銀が7月27~28日の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用で、長期金利の変動幅について「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用することを決めました。また、連続指値オペの運用に関しては、7 月 28 日の午後に実施する指値オペから運用を変更しました。これに関しては、買入金額は引き続き無制限としていますが、今後、当分の間実施する 10 年利付国債 360 回を対象とする連続指値オペにおいて、買入れを行う利回り水準は 従来の0.5%から1.0%に引き上げました。
一方、経済・物価情勢の展望(2023年7月)(展望レポート)では、2023年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)に関しては、政策委員の見通しの中央値で前年度比プラス2.5%と、前回4月時点の見通しのプラス1.8%から上方修正しました。一方、24年度の見通しはプラス1.9%と、前回のプラス2.0%から下方修正し、25年度についてはプラス1.6%と、前回のプラス1.6%を据え置きました。
これらの正式決定の内容に関しては、ほぼ事前に報道された内容に沿ったものでした。にもかかわらず、決定内容が市場に伝わると、円相場や東京株式市場は乱高下しました。ですが、当日の乱高下は「AI等によるアルゴリズムトレード」が主犯ではないかと、感じています。冷静になって考えると、今回の日銀の決定事項は、金融政策の劇的、且つ、大幅な内容ではないため、取り敢えず、日銀を材料にしたトレードは、次回9月21~22日の会合が近づくまで、いったん終了とみています。
今後は、本格化している4~6月期の決算を受けた、個別銘柄物色の色彩が強まるとみています。また、今後に関しては、海外勢が夏季休暇入りしていき、8月に入りお盆が近づくため、国内勢も本格的に夏季休暇入りしていき、例年通り「夏枯れ相場」になっていくとみています。
日経平均については、7月12日の31791.71円~7月28日のナイトセッションで先物がつけた33220円のゾーンでの「もみあい」がメインシナリオです。当面の物色対象に関しては、高PERのグロース市場上場銘柄は避けた方が無難とみています。一方、狙うべきは、4~6月期での好決算を既に発表済みの、プライム市場上場のバリュー系大型株を狙うことをおすすめします。
2023年7月28日
相場の見立て・展望(7月28日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。