欧米の主要中央銀行による金融引き締めの長期化観測の強まりを背景に、世界的に金利が上昇し、株式市場が低迷しています。8月17日の欧州債券市場では、インフレ圧力の根強さを背景にイングランド銀行(英中央銀行)が9月に追加利上げを決めるとの観測が広がり、英長期金利はほぼ15年ぶりの高水準を付ける場面がありました。また、ドイツなど他の国債利回りも軒並み上昇しました。これを受け、17日のNY債券市場で長期債相場は6日続落しました。米10年物国債利回りは、一時は4.32%と2022年10月下旬以来およそ10カ月ぶりの高水準を付ける場面がありました。
長期金利の上昇を嫌気する格好で、17日のNYダウは3日続落し、前日比290.91ドル(0.84%)安の34474.83ドルと、7月中旬以来の安値で取引を終えました。また、ナスダック総合株価指数も3日続落し、同157.70ポイント(1.17%)安の13316.93ポイントと6月上旬以来の安値で取引を終えました。なお、17日のFear & Greed Index(恐怖・強欲指数)は、46で「Neutral(中立)」でした。1カ月前が80で「Extream Greed(極度の強欲)」、1週間前が62で「Greed(強欲)」でした。徐々に投資家心理が悪化している様子が窺えます。また、今後、同指数が、25~44のゾーンに入ると、いよいよ、「Fear(恐怖)」局面入りということになります。
ところで、中国の不動産開発会社、中国恒大集団は8月17日、米連邦破産法15条の適用をニューヨークの連邦破産裁判所に申請しました。これを受け、中国の不動産市況および景気全般の先行きへの警戒が一段と高まっています。中国国家統計局が15日発表した2023年7月の主な経済統計によると、1〜7月のマンション建設など不動産開発投資は8.5%減少しました。販売不振の長期化で住宅の在庫水準は高止まりし、新たな開発投資も低迷しているとのことです。また、7月の小売売上高は前年同月比2.5%増と、増加率は6月の3.1%増から縮小し、市場予想の4.4%増も下回りました。
さらに、中国の不動産最大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)の経営不安もあり、中国の株式市場から資金が流出しています。なお、碧桂園控股に関しては、8月8日、米ドル建て社債2本の利息を期日までに支払えなかったと伝わってから、資金繰り懸念が強まっています。そして、日経速報ニュースは、8月16日、“中国の株式市場から8月は14日までに37億4600万ドル(約5400億円)の資金が流出していることが分かった。”と報じています。一方、16日、ブルームバーグが、“中国当局は今週、一部の投資基金に対し、株式を売り越さないよう求めた。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。”と報じています。
「世界的な金利上昇」と「中国景気の先行き悪化懸念の強まり」を受け、日本株も軟調に推移しています。日経平均は、8月1日の33488.77円を直近高値に調整を継続し、7月12日の31791.71円を既に割り込んでいます。8月18日終値は31450.76円でした。外部環境が改善しない限り、来週の日本株も下げ相場が続く可能性が高そうです。よって、当面は無理して売買せず、「休むも相場」だと思います。ただし、漫然と投資を休むのではなく、虎視眈々と「押し目買い」の好機を待ちましょう。
2023年8月18日
相場の見立て・展望(8月18日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。