9月6日、ウォール・ストリート・ジャーナルが、「中国政府が中央政府機関の職員にiPhoneを含む外国メーカーの携帯機器の職場への持ち込みを禁止した」と報じました。翌7日には、ブルームバーグ通信が、「中国政府が政府系機関や国有企業に対してもアップルのスマートフォン「iPhone」の使用を禁じることを計画している」と報じました。アップルの中国向け売上高は全体の18%近くを占めるため、中国の規制強化による業績への影響が懸念され、同社株への売り圧力が強まっています。アップルの株価は6日と7日の2日間合計で12.14ドル(6.40%)下落しました。
このアップル株の下落の影響もあり、米国株式市場では、ハイテク株全般への売りが広がっています。ちなみに、ナスダック総合株価指数は、9月7日まで4日続落し、4日間で286.14ポイント(2.04%)下落しました。
一方、米政府は中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が8月に発売した新型スマートフォン「Mate60Pro」の検証を始めたとのことです。これに関しては、カナダの調査会社テックインサイツは、ファーウェイが自社開発し、中国の製造受託会社、中芯国際集成電路製造(SMIC)が製造した「キリン」チップが搭載されていると結論づけたとのことです。ファーウェイは自社開発の半導体を搭載し、制裁の影響を軽減しているもようのため、今後、米国では、ファーウェイへの半導体などの輸出を全面的に禁じる可能性が出ているようです。
仮に、米国が現状の対中輸出規制を一段と厳しくするようだと、中国も報復的な措置を講じることでしょう。そして、今後、米中対立で双方の企業活動に制限がかかるケースでは、日本企業への影響も不可避です。このため、米中対立激化が日本株の上値圧迫要因となり得ることは意識しておくべきです。結論として、米中対立激化リスクが低下するまでは、アップル関連の電子部品関連銘柄や、半導体関連のハイテク株は、物色対象から外しておいた方が無難と考えます。
ところで、7日の米長期債相場は4営業日ぶりに反発しました。米10年物国債利回りは前日比0.04%低い4.24%で取引を終えました。しかしながら、7日発表の週間の米新規失業保険申請件数は21万6000件と、市場予想の23万件を下回るなど、米国の労働需給は依然としてタイトです。また、7日の米10年物国債の利回りは低下したとはいえ、ここ最近は、4%大台を安定的に上回って推移しています。このため、高PERのグロース株の上値を買えない状況が日米共に続いているとの認識です。
このような投資環境下、9月8日の日経平均は前日比384.24円(1.16%)安の32606.84円でした。5日移動平均線(8日現在32962.97円)は下回っています。一方、25日移動平均線(同32274.57円)は上回っています。25日移動平均線付近が「押し目メド」と考えてはいますが、同線を明確に割り込むと、押しが深くなる点には注意が必要です。目先は、やや慎重なスタンスでの運用をおすすめします。
2023年9月8日
相場の見立て・展望(9月8日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。