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2023年9月15日

相場の見立て・展望(9月15日付)

情報のプロフェッショナル
藤井 英敏
日本銀行の植田和男総裁は、9月6日、読売新聞の単独インタビューに応じ、短期金利をマイナス0.1%とするマイナス金利政策の解除のタイミングについて、現状では「到底決め打ちできる段階ではない」としたものの、来春の賃上げ動向を含め、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べました。これを受け、市場では、マイナス金利政策の解除の前倒し観測が強まりました。

実際、“大和証券は、マイナス金利解除予想を「25年半ば以降」から「24年4月」に早め、ドイツ証券も「24年12月」から「24年1月」に前倒しした”と報じられています。ただし、15日14時に、米ブルームバーグ通信が「植田総裁発言と市場解釈にギャップ、日銀の認識ほぼ変わらず-関係者」と題した記事を配信しました。当該記事によれば、「総裁発言は従来と比べ踏み込んだ内容ではないと日銀内では受け止められている」、「関係者は「ゼロではない」との発言について、一般論にすぎないと指摘した」とのことです。

一方、米国では、13日に発表された8月のCPIは、エネルギーと食品を除くコアが前年同月比4.3%上昇と、7月の4.7%上昇から減速し、市場予想と一致しました。ただし、CPIは総合で前年同月比の上昇率が3.7%と、7月の3.2%から伸びが拡大しました。また、14日発表された8月のPPIは、前年同月比の上昇率が1.6%となり、2カ月連続でプラス幅が増加しました。前月比でも0.7%上昇し、市場予測0.4%上昇を上回りました。前月比のプラス幅は2022年6月以来、1年2カ月ぶりの高水準でした。変動の激しいエネルギー、食品、運搬を除くコア指数は前年同月比の上昇率が3.0%でした。

米国の物価上昇の主因は、原油価格の上昇に伴うガソリン価格の高騰です。14日のWTI期近の10月物は前日比1.64ドル(1.9%)高の1バレル90.16ドルでした。一時は90.50ドルと期近物として昨年11月上旬以来およそ10カ月ぶり高値を付ける場面がありました。9月5日、サウジアラビアが自主的な減産を12月まで延長すると表明し、ロシアも同日に年末にかけて原油輸出を減らす方針を打ち出しているため、原油先物価格の先高観が強まっているのです。

このような状況下、来週は9月19~20日にFOMC、21~22日に日銀の金融政策決定会合が予定されています。今回のFOMCに関しては、FRBが政策金利を据え置く見通しですが、あわせて公表される参加者らの政策金利見通し(ドットチャート)への投資家の関心が高いようです。一方、金融政策決定会合に関しては、金融政策は現状維持の見通しですが、会合後の記者会見で、植田総裁が先行きの政策修正について踏み込んだ発言をするか否かに関心が集中しています。

なお、日銀に関しては、中川順子審議委員は9月7日、高知市で記者会見し、日銀が掲げる物価上昇率2%の目標達成について「見通せる状況にはなっていない」と述べました。また、中村豊明審議委員は8月31日、岐阜市で講演し、日銀が掲げる2%の物価安定目標について「達成に確信を持てる状況には至っていない」と述べました。一方、田村直樹審議委員は8月30日、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が「はっきりと視界に捉えられる状況になった」、「来年1-3月ごろには、その時点の賃上げのモメンタムやそれまでに得られる年後半の物価動向などのデータから、解像度が一段と上がると期待している」との見解を示しています。また、高田創審議委員は9月6日、山口県下関市で講演し、日銀がめざす2%の物価上昇率について「芽がようやく見えてきた」、「来年の春闘をベースに、この半年間はよく見ておかなくてはいけない」と述べました。

このように、緩和修正に慎重なスタンスを崩さない委員と、修正に前向きな委員とが混在しています。ですが、総務省が8月18日公表した7月の消費者物価指数(CPI)は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数は前年同月比で3.1%上昇しました。上昇率が3%を上回るのは11カ月連続です。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は4.3%上がりました。伸びは2カ月ぶりに拡大しました。5月に並び、第2次石油危機の影響で物価が上昇した1981年6月の4.5%以来の高い上昇率となりました。このように、ここ最近ずっと、日銀の物価目標である2%を上回る状況が続いているのです。このため、遅くとも来年の春闘前後には、緩和政策の修正が行われることでしょう。そして、今後、数カ月間かけて、日銀は丁寧に市場への地ならしをしていく見通しです。

それはさておき、9月15日の日経平均は前日比364.99円(1.10%)高の33533.09円でした。5日移動平均線(15日現在32930.37円)、25日移動平均線(同32400.54円)共に上回っています。15日時点では、「日経平均が25日移動平均線を上回り、且つ、25日移動平均線が上向き」の状況です。この状況が崩れるまでは、強い相場が続く見通しです。積極的な市場参加をおすすめします。
情報のプロフェッショナル
藤井 英敏

カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。

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