日本が祝日だった4月29日に、日本政府・日銀が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったとみられています。日銀が4月30日に公表した5月1日の当座預金残高見通しからの推計では、介入額は5兆円台とのことです。財務省の神田真人財務官は30日、「過度な変動が投機によって発生すると国民生活に悪影響を与える。国際ルールにのっとってしかるべく対応をする」、「介入の有無について私から申し上げることはない」と述べました。このため、今回の介入は、「介入をすぐには公表しない覆面介入」に踏み切ったと観測されています。
一方、米国では、FRBが5月1日まで開いたFOMCで政策金利を5.25〜5.5%に据え置き、米国債の保有額を減らす量的引き締め(QT)を従来の月600億ドルから同250億ドルに減速することも決めました。QTの減速は、金融市場がストレスを受ける可能性を減らすための措置です。また、FOMC後の記者会見で、パウエル議長は「次の行動が利上げになることはありそうにないと考える」と述べました。思ったほどタカ派的な発言ではありませんでしたが、年内の利下げは12月10~11日のFOMCで実施できれば「御の字」の状況となっています。
ただし、米ゴールドマン・サックスは今回のFOMCの結果を受け、年内は7月と12月の2回の利下げ予想を維持しています。その一方で、「今後のインフレ指標が想定外にやや上振れした場合は、利下げは先送りされる可能性がある」とも指摘しています。それにしても、6会合連続で政策金利を現在の5.25%から5.5%の幅と、およそ23年ぶりの高い水準のまま据え置くことを決定しても、インフレが収まる見通しが立ちません。米国経済は恐ろしく強いです。
ところで、FOMCの結果やパウエル議長の記者会見を受けて米金融引き締めへの過度な懸念が後退し、ドル高圧力が弱まったタイミングで、大規模な円買いが入り、NY外国為替市場で円相場が急伸し、一時1ドル=153円台とわずかの時間で4円程度上昇する場面がありました。介入実施の真偽は不明ですが、仮に介入だったとすると、円安加速を防ぐ目的の「スムージング・オペ」として実施したとみられます。また、NY時間で介入したとすれば、ドルの供給元である米国の同意及び協力を得られている可能性が出てきます。その場合、日本政府の介入の資金面での不安は大幅に低下します。ちなみに、過度のドル高は、米製造業にはマイナスに作用します。もしも、米政府がこれ以上のドル高を望まないのであれば、ようやく「円安・ドル高」に歯止めが掛かることでしょう。
それはさておき、日本ではゴールデンウィーク明けから5月15日まで決算発表ラッシュとなります。具体的には、10日に701件、13日に457件、14日に593件、15日に579件発表される予定です。この「決算ラッシュ期間」は、「決算プレー(決算を材料とした短期の株式取引)」がメインとなり、個別株物色の色彩が強い状況が続く見通しです。一方、日経平均については、2日終値は38236.07円です。少なくとも、25日移動平均線(2日現在38832.33円)を上抜くまでは、調整が続くとみています。「日経平均の調整期間中」については、個別株に投資する際には、高値飛びつき買いは避け、丁寧に押し目買いを狙う戦略をおすすめします。
2024年5月8日
相場の見立て・展望(5月02日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。