6月5日の米国株式市場では、ナスダック総合株価指数とS&P500種株価指数が過去最高値を更新しました。この日は、エヌビディアの時価総額が3兆118億ドルと、アップルを抜き、マイクロソフト(3兆1513億ドル)に次ぐ世界2位に浮上したことが話題になりました。エヌビディアの時価総額が1兆ドルから2兆ドルになるまで9カ月、2兆ドルから3兆ドルにはわずか3カ月で到達し、現在、世界1位が目前に迫っていることに、多くの投資家が驚いているようです。
また、6日の欧州株式市場で、オランダの半導体製造装置大手のASMLホールディングの時価総額が欧州2位となったことも話題になっています。6日までにASMLの時価総額は一時3770億ユーロを超えて、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンを上回りました。ASMLは半導体製造装置の中でも、最先端半導体の量産に必要となる極端紫外線(EUV)露光装置に強みを持つ企業です。このように欧米株式市場では、半導体関連企業の時価総額が急激に膨らんでいます。当然のことながら、日本でも同様なことが起きることでしょう。
なお、6月4日、NEXT FUNDS 日経半導体株指数連動型上場投信(200A)が東証に新規上場したことも、市場の一部で話題になっています。ちなみに、日経半導体株指数は東証に上場する半導体関連銘柄から構成される時価総額ウエート方式の指数です。時価総額が大きい30銘柄で構成し、日本の半導体関連株の値動きを表します。そして、この上場投信(ETF)は、日経半導体株指数(対象株価指数)に連動する投資成果(基準価額の変動率が対象株価指数の変動率に一致することをいいます。)を目指します。正直、東証に上場している主力の半導体株は値嵩株が多く、資金面で、個人投資家にとって購入するにはハードルが高いと感じています。このため、少額で半導体関連株に投資可能なETFが上場したことは、少額資金の個人投資家には朗報だと思います。
それはさておき、FRBは、6月11~12日にFOMCを開催します。FF金利の誘導目標は、5.25%~5.50%で、7会合連続で据え置かれ、FOMC声明にも大きな変更はないとみられています。パウエル議長の記者会見については、従来の「政策判断はデータ次第」というスタンスを継続する見通しです。ただし、今回は「ドットチャート」が更新されます。前回3月時点では、2024年から2026年まで、年3回の0.25%の利下げが適切との見方が示されていました。しかしながら、今回は、2024年の利下げ回数は、前回の3回から2回に修正されるとみられています。なお、FOMCが市場の事前予想通りになる可能性が高いと、私は考えているため、今回のFOMCは、市場の波乱要因にはならないとみています。
一方、日本では、日銀が6月13~14日に金融政策決定会合を開きます。日銀の植田和男総裁は6月6日の参院財政金融委員会での答弁で、国債の買い入れの方針について、「3月の金融政策の枠組み変更のあとの、金融市場の状況を確認しているところで、今後、大規模な金融緩和の出口戦略を進めていく中で減額することが適当だと考えている」と述べました。市場では、今回の会合で、買い入れ額の減額を判断するとの観測が囁かれています。
金融政策の正常化は中長期的には日本経済にポジティブなことと、私は考えています。しかしながら、実際に減額を決めれば長期金利が上昇するなど、金融市場が短期的に急変動する可能性は残ります。万が一そうなっても、くれぐれも、相場の急変動に驚いて、悪手は打たないようにしてください。そのためにも、事前にしっかりと頭の中で様々なケースをシュミレーションしておいて、「急変動の発生」に備えておくことを強くおすすめします。「備えあれば憂いなし」です。
2024年6月7日
相場の見立て・展望(6月7日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。