7月26日の日経平均は大引け間際の14時48分に37611.19円を付けました。7月11日のザラ場の史上最高値42426.77円から4815.58円(11.35%)の短期急落となりました。今回の日経平均の急落の主因は、外国為替市場での急激な円高進行と、米国株式市場でのハイテク株の急落です。
円高のきっかけは、2人の有力政治家の日銀の政策に関する踏み込んだ発言と、「日銀、利上げの是非を議論」との報道でした。まず、河野太郎デジタル相は、17日「日銀は政策金利を上げる必要がある」、「円は安過ぎだ。価値を戻す必要がある」と発言しました。また、自民党の茂木敏充幹事長が、22日「金融政策を正常化する方向で着実に政策を進める、こういう方針をもっと明確に打ち出すことが必要だ」と語りました。そして、ロイター通信が24日、関係者の話として、30〜31日に開かれる日銀の金融政策決定会合で「利上げの是非を議論し、今後数年で国債購入額をほぼ半減させる計画を発表しそうだ」と報じました。これらの発言や報道を受け、日米金利差縮小の思惑が強まり、外国為替市場で円高が急激に進行し、25日に一時1ドル=151円93銭を付ける場面がありました。そして、この円高進行を受け、東京株式市場では、輸出関連への売り圧力が強まりました。
一方、米国では、大型ハイテク株が総崩れとなった結果、24日のナスダック総合株価指数は前日比3.63%安と2022年10月以来の下落率の大きさを記録しました。きっかけは、アルファベットとテスラの決算が嫌気され、売りが他の大型ハイテク株に波及したことです。グーグルの親会社であるアルファベットに関しては、「YouTube」向けの広告収入が市場予想に届かなかったことが嫌気されました。テスラに関しては、2024年4〜6月期決算での1株利益が市場予想を下回ったほか、ロボタクシーの発表延期が明らかになったことが悪材料視されました。この米国株式市場でのハイテク株安に連れ安する格好で、東京株式市場でも、半導体関連を中心にしたハイテク株が急落しているのです。
なお、26日の日経平均は8日続落し、終値は37667.41円と、5日移動平均線(26日現在38777.03円)を下回っています。今後に関しては、「日経平均が5日移動平均線を上回り、且つ、5日移動平均線自体が上向きに転じる」までは、調整が続くとみています。調整が長引くようだと、200日移動平均線(同36685.69円)付近まで押すと考えています。
ご存じのように、来週には、日銀が金融政策決定会合を30〜31日の日程で開きます。おそらく、正式な声明が発表されるまでは、追加利上げに動くとの思惑は燻り続けることでしょう。私は、今回の会合では利上げは見送る可能性が高いとみていますが、正直なところ、蓋を開けてみないとわかりません。このため、31日の結果発表までは、「円高・株安の継続」を覚悟しておく必要があります。一方、発表後の「当面の悪材料出尽くし」の値動きには期待をしておきたいと思います。いずれにせよ、足元の投資環境は不安定、且つ不透明なため、引き続きリスク管理を通常モードよりも厳しくして、「生き残ることを最優先にした運用」を強くおすすめします。
2024年7月26日
相場の見立て・展望(7月26日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。