「円キャリートレードの巻き戻し(円買い・ドル売り)」が継続した結果、シカゴの投機筋による円ドルの持ち高が買い越しに転じました。米商品先物取引委員会(CFTC)の集計によると、8月13日時点でヘッジファンドなど投機筋(非商業部門)の通貨先物市場における円の対ドルでの売り買いの建玉を差し引きすると2万3104枚の買い越しと、2021年3月以来、3年5カ月ぶりの買い越し転換となりました。それにしても、投機筋(非商業部門)の円の売り越し幅が、7月2日時点で18万4223枚にまで積み上がっていたことを考えれば、およそ1カ月半で、景色が180度変わりました。それだけ、巻き戻しが急激に発生したということです。
一方、8月16日時点の信用買い残は3兆8535億円と、9日申し込み時点と比べて1099億円減りました。減少は3週連続で、2月以来の低水準です。ちなみに、9日時点の信用買い残は前週比9086億円減の3兆9635億円でした。減少幅はブルームバーグのデータでさかのぼれる2005年以降で最大とのことです。これに関しては、8月15日にブルーバーグが、“松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、第1週(5-9日)は「株価急落で追い証を回避するための売りや実際の追い証発生に伴う売りが5日と6日に多かった」と振り返り、「レバレッジを効かせた個人はほとんど投げさせられた」と述べた。”と報じています。あの暴落に巻き込まれてしまっては、追証を入れる余裕のなかったレバレッジ組は、「ぶん投げる」しかなかったと思います。
なお、シカゴの投機筋による円の持ち高が買い越しに転じたことで、強烈な円高圧力(円の売り方による買戻し圧力)はなくなったとみています。また、信用買い残の整理が急ピッチに進んだことは、需給面でポジティブ材料です。このことから、日本株の急落リスクは大幅に低下したことでしょう。
ところで、米国に関しては、「恐怖指数」とも呼ばれるVIX指数は、8月22日は17.55で取引を終えました。VIXは5日には一時65.73と、2020年3月のコロナ・ショックや、2008年9月のリーマン・ショック以来の水準にまで急騰する場面がありました。ちなみに、VIXは20を基準に、20を下回って推移する限り、投資家の下値不安は大幅に後退しているとみることができます。よって、米国株の下値不安は大幅に後退していると考えています。
足元の日経平均については、8月5日に付けた年初来安値である31156.12円を起点にした大規模なリバウンドが継続中です。8月23日の日経平均の終値は前日比153.26円(0.40%)高の38364.27円でした。当然のことながらチャートは大幅に改善しています。16日に200日移動平均線を上回り、「レジサポ転換(これまのレジスタンスライン(抵抗線)がブレイクされたことによりサポートライン(支持線)に転換すること)」が継続しているからです。よって、当面の日経平均のサポートラインは200日移動平均線(23日現在37197.05円)となったとの前提で、引き続く、押し目を積極的に狙うことをおすすめします。
2024年8月23日
相場の見立て・展望(8月23日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。