石破茂首相は10月2日、日銀の植田和男総裁と面会しました。そして、面会後、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と述べました。一方、植田総裁は面会後、「日銀の見通し通りに経済・物価が動いていけば、金融緩和の度合いを調整していくことになる。本当にそうかを見極めるための時間は十分にあると考えているので丁寧に見ていきたいと申し上げた」と明らかにしました。これを受け、市場では、日銀の早期利上げ観測が後退し、外国為替市場で円が対ドルで売られ、円安が進みました。この円安を受け、輸出関連企業が買われ、3日の日経平均は前日比743.30円(1.97%)高の38552.06円で取引を終えました。
ところで、石破首相は4日、総合経済対策の策定に着手するよう閣僚に指示しました。経済対策の具体的な内容としては、物価高への対応として低所得者世帯向けに給付金を配るほか、自治体向けの交付金を大幅に拡充することに加え、災害からの復旧を加速して防災・減災への取り組みや国土強靱化も進めるとのことです。ちなみに、石破首相は、10月1日、今後の政治日程について、「10月9日に衆院を解散し、15日公示、27日に総選挙を行う」と正式に表明しました。つまり、今回の経済対策の策定は、露骨な選挙対策なのでしょう。そうは言っても、経済対策による「財政出動」は、日本の景気・株式相場にはポジティブな材料です。
よって、当面の株式市場では、「地方創生関連」、「防災・国土強靭化関連」が人気化しそうです。また、10月1日の新内閣発足に当たっての記者会見で、石破首相が、「防衛力の抜本的な強化」、「サイバーセキュリティーの強化」にも言及したため、「防衛関連」、「サイバーセキュリティー関連」も注目するべき国策テーマになったとみています。
一方、米国では、3日のNYダウは反落し、前日比184.93ドル(0.43%)安の42011.59ドルでした。イランによるミサイル攻撃を受けたイスラエルが近く報復を始めるとの見方から、中東の地政学リスクが高まったことで、株式が売られました。なお、3日のWTI期近の11月物は前日比3.61ドル(5.1%)高の1バレル73.71ドルでした。一時は73.99ドルと9月上旬以来、期近物として約1カ月ぶりの高値を付けました。今後、中東情勢が一気に悪化して、原油先物がここから急騰するようだと、全世界的に「リスクオフムード」が強まる見通しです。ただし、現時点では、バイデン米大統領が3日、「中東で全面戦争が起きるとは考えていない」と発言したことから、「報復合戦の応酬から全面的な戦争に発展するリスクは小さい」とはみています。
このような投資環境の中で、4日の日経平均は小幅続伸し、前日比83.56円(0.22%)高の38635.62円でした。日経平均は週間で1193.94円(3.00%)下落しました。現在は「調整局面」との認識です。しかしながら、日経平均が、25日移動平均線(4日現在37580.00円)を上回って推移する限り、「弱気」になる必要はないと考えています。ただし、割り込んだら、躊躇なく慎重スタンスに転じることだけは、忘れないでください。
2024年10月4日
相場の見立て・展望(10月4日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。