11月5日に投開票された米大統領選で共和党のトランプ氏が勝利しました。同時実施された連邦議会選では、共和党が4年ぶりに上院(定数100)の多数派奪還を決めました。一方、下院(定数435)に関しては、集計が続いており、勝敗判明に時間がかかる見通しです。仮に、ホワイトハウスと上下両院を共和党が独占する「トリプルレッド」となるケースでは、トランプ次期大統領の選挙公約の実現確度が高まる見通しです。ただし、短期的な視点では、「トランプ・トレード」に関しては、いったんは「材料出尽くし」となった感じがします。その一方で、中長期的には「トランプ・トレード」は継続するとみています。
ところで、FRBは6~7日まで開いたFOMCで、0.25%の利下げを決め、政策金利を4.50〜4.75%としました。これは市場の予想通りでした。今回のFOMC声明では、「(インフレが持続的に2%に向かいつつあることに関して)自信を深めている」との文言が削除され、インフレは当局の目標に向けて「進展した」と記されました。これに関して、FOMC後の記者会見で、パウエル議長は、「金融政策は決まったコースではなく、会合ごとに決定する」と述べています。なお、現時点では、市場は次回12月17~18日のFOMCでも、0.25%の利下げを決めるというのが大方の予想です。
ご存じの通り、トランプ次期大統領は、1期目在任時に実現した「トランプ減税」の恒久化に加え、残業手当などの非課税化を打ち出しています。また、自国の製造業を保護するため、同盟国の日欧を含めたすべての国からの輸入品に対して10~20%の関税を課す方針を示しています。これらが実現するようだと、米国のインフレが再燃しかねません。トランプ政権下で、FRBは難しい舵取りを強いられることは間違いなさそうです。ですが、ここまで政策金利を引き上げておいたことで、FRBは臨機応変、且つ柔軟に対応することが可能と考えています。
一方、国内では、総理大臣指名選挙を行う特別国会が、11日に召集されます。決選投票では、国民民主党などが野党第1党の立憲民主党の野田氏に投票しない方針を示しています。このため、石破総理大臣が最も多くの得票を得て再び総理大臣に選出される見通しです。なお、石破氏が再び総理として選出された場合、トランプ次期米大統領と信頼関係を構築できるのかどうかが懸念材料となります。なぜなら、両氏のキャラが真逆だからです。
最後に、8日の日経平均の終値は39500.37円でした。5日移動平均線(8日現在38978.20円)も、25日移動平均線(同38919.76円)共に上回っています。6日の1005.77円高で、テクニカルが改善しました。今後については、少なくとも、5日移動平均線を下回り、且つ、同線が下向きに転じるまでは、「強気」を維持して相場に臨むことをおすすめします。ただし、資金は小型株には来ていない印象です。このため、時価総額上位の主力株や、株価指数先物などの押し目買い狙いが奏功すると考えています。
2024年11月8日
相場の見立て・展望(11月8日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。