オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングは、11月14日、2年ぶりに2030年12月期の見通しを公表しました。売上高は440億〜600億ユーロ、粗利益率は約56〜60%とし、AI関連のサーバーやデータセンター向けが2年前比で4割強伸びるとの見込みを示しました。この強気見通しが好感され、15日の東京株式市場で、東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)、SCREENホールディングス(7735)、信越化学(4063)などの半導体関連が買われ、日経平均を押し上げました。しかしながら、日経平均は9時30分に39101.64円の高値を付けた後、伸び悩み、終値は前日比107.21円(0.28%)高の38642.91円でした。
ところで、米共和党が大統領職と上下両院を掌握する「トリプルレッド」を達成したことで、トランプ次期大統領が、選挙公約を次々に実現する可能性が高まりました。具体的には、「個人所得などトランプ減税の恒久化」、「外国製品すべてに10-20%の関税をかけ、中国からの輸入品には60%以上の関税を課すこと」、「バイデン政権が掲げてきた反トラスト法の厳格な運用方針を緩和すること」などです。このため、好調な米経済が一段と強化される見通しです。その結果、金融市場では、インフレ再燃が懸念されて、米長期金利が上昇しています。
このような状況下、パウエルFRB議長が14日に「米経済は世界中の主要国の中で群を抜いて極めて良好だ」、「経済は利下げを急ぐ必要があるというシグナルを送っていない」などと語りました。この発言も、米金利の先高観を強める材料となっています。なお、この議長発言は、「トランプ政権下でのインフレ再燃リスク」を念頭に置いたものだと理解しています。
それはさておき、14日のアジア市場の取引時間帯に、米10年物国債利回りが4.48%と、およそ4カ月ぶりの高水準を付ける場面がありました。米長期金利の上昇を受け、為替市場では、日米の金利差拡大を見込んだ円売り・ドル買いが加速しており、15日の東京外国為替市場では、9時49分に1ドル=156円75銭まで円安が進行する場面がありました。円安は、わが国輸出関連企業の収益・株価へのポジティブ材料です。しかしながら、15日の日経平均の動きを見ると、心理的節目の39000円が強力な抵抗となっているように感じます。主因は、自動車など主力の製造業について、中国景気の減速が円安効果を打ち消していることと考えています。よって、当面は、決算発表で好業績が確認できた銘柄のうち、中国経済減速リスクが低く、国内外の機関投資家の買いが見込める、内需系大型株を狙うことをおすすめします。
2024年11月15日
相場の見立て・展望(11月15日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。