感謝祭前の11月27日のNYダウは6営業日ぶりに反落し、前日比138.25ドル(0.30%)安の44722.06ドルでした。しかしながら、NYダウは、26日まで5日続伸し、連日で最高値を更新していました。「非常に強い動き」と評価してよいでしょう。株高の背景は、(1)トランプ次期大統領の減税や規制緩和への期待、(2)トランプ氏が財務長官に投資家のスコット・ベッセント氏を起用すると決めたこと、などです。ベッセント氏は、2011年から2015年まではジョージ・ソロス氏のソロス・ファンド・マネジメントで最高投資責任者(CIO)を務めていた人物です。つまり、ベッセント氏は、ウォール街出身のマーケットフレンドリーな人物であり、且つ、トランプ政権とウォール街の橋渡しも期待できる人物なのです。
しかしながら、好調な米国株とは対照的に、日経平均は冴えない動きを続けています。というのは、トランプ氏が、中国やカナダ、メキシコからの輸入品への追加関税を表明したことで、日本の自動車業界や半導体業界にも悪影響が及ぶとの見方が強まったからです。
ところで、11月29日の東京外国為替市場で円が対ドルで急伸し、東京株式市場の「ザラバ」中に1ドル=149円台の円高となる場面がありました。11月の東京都区部の生鮮食品を除く消費者物価指数が前年同月比2.2%上昇し、伸び率が10月の1.8%から0.4ポイント増加し、3カ月ぶりに拡大したことで、日銀の利上げ観測が強まり、日米金利差縮小を意識した円買い・ドル売りが加速した結果です。
なお、帝国データバンクWeb版が、「主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした2025年の飲食料品値上げは3933品目を数えた」、「2025年は原材料高以外の要因による粘着質な値上げの継続が見込まれ、品目数は24年を上回って推移する可能性がある」と報じています。こうなると、「物価の番人」である日銀に利上げ圧力が掛かり続ける見通しです。ちなみに、植田和男日銀総裁は11月18日、2%の物価安定目標に向け、経済や物価が日銀の想定通りに推移すれば政策金利を引き上げる方針を強調しました。
ただし、物価上昇にだけに焦点を当てて、賃金の上昇が伴わない状況で、追加利上げが行われた場合、個人消費は悪化することになります。当然それは、株式相場の上値圧迫要因となります。また、利上げは円高要因であり、円高は、我が国輸出企業の収益悪化材料です。このため、12月18~19日の金融政策決定会合で、日銀が拙速な追加利上げを決めるケースでは、指数寄与度の大きい値嵩の輸出関連株が売られ、日経平均の短期的な急落リスクが高まることでしょう。また、消費関連への売り圧力が強まる可能性もあります。一方で、金利上昇がメリットになる金融セクターや、キャッシュリッチ企業、そして、円高メリット企業には、資金流入が見込めるとみています。
現在、日経平均は概ね38000円±500円程度の狭いレンジでのボックス相場を続けています。つまり、「横這いトレンド(トレンドレス)」です。上昇トレンドなのか、下降トレンドなのか、現時点ではわかりませんが、いずれ、トレンドが発生すると考えています。上昇トレンドなら問題はありませんが、万が一、下降トレンドが発生した場合、多くの個人投資家にとって、最悪な年末年始になってしまいます。このため、相場が急落しても、致命傷を負わないように、相場が膠着している今こそ、チャートが悪化している「弱い値動きの銘柄」や、信用買い残が積み上がっている「信用需給の悪い銘柄」に関しては、他の投資家が大慌てで「節税売り(損出し売り)」を出してくる前に、粛々と整理しておくことをおすすめします。
2024年11月29日
相場の見立て・展望(11月29日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。