米国株式市場では、NYダウが弱い動きを続けています。12月19日のNYダウは11営業日ぶりに反発し、前日比15.37ドル(0.04%)高の42342.24ドルでした。NYダウは5日~18日までの10営業日で、終値ベースで2687.17ドル(5.97%)も下げていたにもかかわらず、その反発力は極めて弱いものでした。また、19日のナスダック総合株価指数は3日続落し、前日比19.93ポイント(0.10%)安の19372.77ポイントでした。最近までは、「弱いダウ・強いナスダック」という構図でしたが、ここにきて、ハイテク株への売り圧力が強まった結果、ナスダックの上値も重くなっています。
米株安の主因は、米長期金利の上昇とみています。そして、長期金利上昇の理由は、米国景気が堅調なため、インフレ再燃リスクが高いからです。このため、FRBは17〜18日に開いたFOMCで、政策金利の誘導目標を0.25%引き下げ、4.25〜4.5%とすることを決めたものの、ドットチャートでは、2025年末の予想中央値が現在の水準から0.25%の利下げ2回分に相当する3.875%と、前回9月時点の3.375%から切り上がりました。また、パウエル議長はFOMC後の記者会見で、「(政策金利は)中立にかなり近づいている」と述べるなど、「タカ派姿勢」を鮮明にしています。つまり、米国では長短金利が高止まりする確率が高まっているのです。これが米国株の上値を圧迫していると考えています。
一方、日本では、日銀が19日まで開いた金融政策決定会合で、大方の予想通り、政策金利を0.25%程度に据え置くと決めました。そして、植田和男総裁は会合後の記者会見で「来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど今後の賃金の動向について、もう少し情報が必要と考えています。また、米国をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性も大きい状況が続いていると判断しています。」などと述べました。このように、利上げに慎重なハト派姿勢を打ち出したことで、市場では、来年1月の会合でも、利上げを見送るとの見方が強まっています。
「タカ派のFRB・ハト派の日銀」なら、当然のことながら、日米金利差拡大の思惑から、「ドル買い・円売り」が為替市場で加速することになります。実際、20日午前の円相場は一時1ドル=157円92銭と、7月以来5カ月ぶりの安値をつけました。その円安にかかわらず、20日の日経平均は6日続落し、前日比111.68円(0.29%)安の38701.90円でした。この日は、19日の米国株式市場で、2024年12月〜25年2月期の収益見通しが市場予想を大幅に下回った、半導体大手のマイクロン・テクノロジーが16.18%安と急落した影響で、日本でもアドバンテスト(6857)、東京エレクトン(8035)など半導体関連に売りが出ました。また、日銀の早期利上げ観測の後退を受けて、金融株も売られました。
それはさておき、FOMCも金融政策決定会合も終わりました。年内に大きなイベントなく、海外投資家もクリスマス休暇入りするため、年末までの相場の主役は国内勢となります。とりわけ、個人投資家の存在感が増す見通しです。そして、今年、プライム市場の主力株で大儲けした個人から、年内受け渡し最終日の26日に向けて「節税売り(損出し売り)」が加速する可能性が高いとみています。特に、「チャートが悪化し、信用買い残が積み上がっている銘柄」への売り圧力が強まると考えています。ただし、節税ニーズという特殊な事情で、バリュエーションを無視して売られた後は、逆に需給が改善して、株価も戻りやすくなるはずです。よって、12月23日~26日に関しては、「会社の内容は良好なのに需給悪だけで下げている銘柄の絶好の仕込み場」とみています。
2024年12月20日
相場の見立て・展望(12月20日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。