日本が年末年始で休場中に、米国株が軟調に推移したことを嫌気する格好で、1月6日の大発会の日経平均は続落し、終値は大納会比587.49円(1.47%)安の39307.05円と、大発会は3年連続の下落となりましたが、翌7日は前日比776.25円高と、大発会での下落を一気に取り返しました。ですが、8日は102.24円安、9日は375.97円安、そして週末10日は414.69円安となりました。この3日続落で、今週は結局、大納会終値(39894.54円)比704.14円(1.77%)安で着地しました。残念ながら、2025年相場は冴えない形でのスタートとなりました。ちなみに市場では、2023年、2024年と続いた「大発会が安値となるというアノマリー」が早くも崩れたことが話題になっていました。
なお、日経平均が冴えない値動きになっている理由は、(1)米長期金利の先高観が強まっていることと、(2)米国が保護主義に傾いていることが挙げられます。
米CNNが「20日に米大統領に就任するトランプ氏が早期に幅広い関税を導入することを念頭に「緊急事態宣言」を検討している」と報じたことを受け、1月8日、米10年物国債利回りは4.73%と、2024年4月以来の高水準を付ける場面がありました。関税が米国のインフレ圧力を高めるとの見方が強まったから、債券が売れたのです。なお、トランプ2.0(トランプ次期政権)は「関税引き上げ」に加え、「不法移民大量送還」、「減税」などの政策を掲げています。このため、インフレ再燃や財政悪化懸念から、米長期金利の先高観が強い状況が続く見通しです。これは、株価指標が割高なハイテク株の上値圧迫要因です。
一方、日本製鉄(5401)は、USスチールの買収計画に対するバイデン大統領の禁止命令は違法な政治的介入だとして、バイデン大統領などを相手取り、禁止命令の無効を求める訴えを起こしました。また、トランプ次期米大統領は6日、「関税によってUSスチールの収益力と企業価値がはるかに高まるという今、なぜUSスチールを売却したがるのか?」と自らが運営するSNSに投稿しました。この投稿でわかるように、トランプ2.0も、「米国第一」を掲げて、バイデン政権同様に、保護主義的な政策を進める見通しです。このため、現時点においては、日本企業の対米投資や、米企業絡みのM&A機運は低下する可能性が高い状況になったと認識しています。これは、わが国の企業活動にマイナスに作用する見通しです。
ところで、日経平均とTOPIXが過去最高値を付けた昨年7月11日から半年を迎えたため、制度信用買いの手仕舞い売りが一巡しました。これは、需給面でのプラス材料です。よって、米国の長期金利が上げ止まれば、日本株も反発に転じやすくなっている需給状況とみています。なお、米国の保護主義は、トランプ2.0発足後は一段と強まるものと、覚悟はしています。そして、発足後は、トランプ大統領の発言・投稿などに、市場は振り回される見通しです。ただし、日本は米国の同盟国です。好調な米国経済の恩恵を受けることは可能です。このため、日本株の下値は限定的で、投資環境が落ち着けば上値を追う可能性が高いとみています。ただし、目先に関しては、不安定な相場が続くことを前提に、慎重スタンスで相場に臨むことをおすすめします。
2025年1月10日
相場の見立て・展望(1月10日付)
![](/images/thumbs__hidetoshi_fujii.jpg)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
![](/images/thumbs__hidetoshi_fujii.jpg)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。