トランプ米大統領は、1月20日、「パリ協定」からの離脱や、不法移民の入国の阻止に向けた非常事態宣言などの大統領令に次々と署名しました。市場はトランプ大統領の積極的な関税政策がインフレ圧力を高めることを懸念していました。というのは、トランプ大統領は20日、カナダとメキシコに対して2月1日から25%の関税をかける可能性には言及していたからです。ですが、20日時点では、トランプ大統領は関税導入には踏み込まなかったため、21日の米10年物国債利回りは前週末比0.06%低い4.57%で取引を終えました。
ですが、トランプ大統領が、21日の記者会見で2月1日から中国の輸入品に10%の追加関税を課すことを検討していると明らかにしたため、22日の米10年物国債利回りは前日比0.04%高い4.61%で取引を終えました。そして、23日の米10年物国債利回りは2日連続で上昇し、前日比0.03%高い4.64%で取引を終えました。このように、米債券市場は、トランプ大統領の関税政策に神経質になっています。また、トランプ大統領は、2025年末で失効する所得税減税を延長し、法人税減税も実行する見通しです。このため、米国債が増発され、米財政の一段の悪化も懸念されています。つまり、当面の米長期金利は「上がり易く、下がり難い」状況なのです。
ただし、23日のNYダウは4日続伸し、前日比408.34ドル(0.92%)高の44565.07ドルでした。また、S&P500種株価指数も4日続伸し、同32.34ポイント(0.53%)高の6118.71ポイントと、昨年12月6日につけた最高値を約7週間ぶりに更新しました。この日は、トランプ大統領が、オンラインで出席したダボス会議で「早急に利下げを要求する」と発言したことが、米株式の買い材料となりました。そうはいっても、ここ最近の米株式市場は、米長期金利への感応度が鈍い状況(米長期金利が上昇しても米株式相場が堅調な状況)です。これは、日本株にとっては心強いことです。
一方、日本では、日銀が24日まで開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%から0.5%に引き上げました。引き上げ自体は事前報道で、ほぼ織り込み済みでしたが、24日の日経平均は5日ぶりに反落し、終値は前日比26.89円(0.07%)安の39931.98円でした。利上げを受け、24日午後の東京外国為替市場で円高・ドル安が進んだことが、日経平均反落の主因です。
ですが、日銀の植田和男総裁は24日午後、金融政策決定会合後の記者会見で「ポンポン金利を上げていけると安易に考えず注意深く進んでいきたい」と述べました。このハト派的な発言を考慮すると、今後、円高が一方的に進む可能性は低いと考えています。
「米株式市場が米長期金利上昇でも強い動きを続けていること」、「日銀がハト派的で円急伸リスクが低いこと」の2点から、当面の日経平均は底堅く推移する可能性が高いとみています。ただし、「トランプ大統領の過激発言で世界の金融市場が大きく動くリスク」は常に存在します。この「トランプリスク」を意識したとしても、日本株の押し目は積極的に拾いたい投資環境と認識しています。なぜならば、日本株は米国景気敏感株です。そして、その米国経済は足元で非常に強いし、第2次トランプ政権の政策で一段と強化される見通しだからです。
2025年1月24日
相場の見立て・展望(1月24日付)

- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏

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- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。