ついに、海外投資家が日本株(現物)を売り越しました。海外勢は6月第3週(19〜23日)に3604億円売り越しました。売り越しは13週ぶりのことです。海外勢による、6月第2週までの12週間の累計買い越し額は6兆1756億円でした。一方、6月第3週(19~23日)の先物の投資部門別売買動向(日経平均先物、TOPIX先物、ミニ日経平均先物、ミニTOPIX先物の合計)によると、海外勢は2週ぶりに買い越しました。買い越し額は586億円でした。つまり、6月第3週については、先物と現物株との合算では3018億円の売り越しでした。急ピッチな相場上昇を受けて、海外勢も利益確定の売りを出したのでしょう。
また、6月第3週、年金基金などの売買を反映する信託銀行は4074億円売り越しました。売り越し額は前週の821億円の約5倍に膨らみました。四半期末を前に、株高で増えた持ち高(時価ベース)を基本ポートフォリオへの調整を目的とした売りを加速したとみられます。そして、最終的な駆け込み売りは6月第4週(26~30日)だったとみています。なお、大和証券によれば、「GPIFが保有する国内株式の割合は年末の25.1%から現在は27.4%に上昇したと同証券(大和証券)では試算しており、国内株式の割合を基本ポートフォリオの25%に抑えるためには、5兆2000億円ほど売却する必要がある」ということです。このため、日本の株高が続く限り、信託銀行経由のリバランス売りは延々と続く見通しです。
また、同じく大和証券によれば、「7月7日と10日が決算日となるETFが分配金支払いのために解消するポジションは、合計で1兆1000億円超と過去最大になる見込み」とのことです。このため、7月10日までの日本株の需給はあまりよくないとみておいた方がよさそうです。
その一方で、中長期的な相場の先高観は強いため、下値は相当堅いとみています。日本株が崩れにくい(先高観が強い)主因のひとつが「円安」です。FRBによる金融引き締めが長期化するとの見方が一段と強まっているため、日米金利差が拡大し、円売り・ドル買い圧力が強い状況が続いています。例えば、6月29日発表の週間の新規失業保険申請件数は23万9000件と前週から減少し、市場予想の26万4000件を下回りました。FRBの金融引き締めにもかかわらず、米労働市場は相変わらずタイトです。このため、7月25、26日開催の次回FOMCでは、非常に高い確率で「0.25%」の利上げが決まるとみています。
また、その会合で、「利上げ打ち止め」という雰囲気になることもなさそうです。仮にさらなる利上げ見通しが強まった場合、米国株、とりわけ高PERのグロース株(ハイテク株)にはネガティブに作用するでしょう。しかしながら、景気敏感株が買われ、米国株全体としては大きく崩れることはないでしょう。一方、日本株も円安を背景に、底割れするような動きになるとは思っていません。5月、6月相場の主役は「半導体」、「生成AI」でした。この2大テーマ自体は息の長いテーマで直ちに廃れることないでしょう。ですが、短期的に多くの銘柄が過熱気味に上昇しました。現時点において、多くの関連銘柄が、過熱を冷ます短期的な調整局面入りしているとみています。よって、当面の投資戦略としては、質の高い収益を生み出し、財務内容も比較的健全な優良企業である、「クオリティ株」のうち、低PER・低PBRで、株価が出遅れ気味の「内需系大型株」を狙うことをおすすめします。
2023年6月30日
【6/30】狩猟民族と農耕民族違い

- 投資調査部部長
- 伊東 聡

- 投資調査部部長
- 伊東 聡
東京都出身。高校を卒業後、証券会社の場立ちを経験し取引所内での自己売買(ディーリング)からシステムに移行するまで当時の店頭株(ジャスダック)専門のトレーダーを経験。25年近い証券ディーラー人生。経歴や武勇伝は数知れず、5分で8000万円やられた経験の一方で、月に3億円近い利益を上げた経験も。「Yahooファイナンス」や夕刊フジ「株ワングランプリ」でも活躍。本人曰く「三度の飯より株が好き」
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。